県民・医師に対する
重粒子線がん治療に対する意識調査

出典:平成25年沖縄県重粒子線治療施設導入可能性検討調査報告書

電話による県民意識調査

[期間] 12月~16日~1月13日の25日間
[調査方法] 電話アンケート
[調査範囲] 全県(離島含)17,374世帯
[有効回答数] 3,036世帯

■地域別アンケート回答者数

地域別では中部が5割を超えた。
離島地区は宮古島と石垣の両方を合わせても1割に満たなかった。

■重粒子線治療を知っているか

重粒子線を知らなかった人が8割に近かった。

■重粒子線治療を受けたいか

重粒子線治療を受けたいと回答した人は58%約6割存在した。

■重粒子線の治療費について

治療費に対する考えは、高くても受診したい人は約1割存在した。保険適用まで待つが最も多く6割近くを占めた。

コメント

8割の県民が重粒子線がん治療を知らない。→継続的なPRが必要
6割の県民が重粒子線治療を受けたい → 治療施設の必要性はある

県内5か所での公開セミナーでのアンケート

[調査対象] 那覇市、沖縄市、名護市、宮古島市、石垣市
[有効回答数]718世帯(回収率7割)
[有効回答数] 合計1.049名

■開催地別参加者比率

地域別では5割弱が那覇市(南部)だった。離島地区は宮古と石垣を合わせると1割を超え、北部地区より上回った。

■重粒子線治療を知っていたか

重粒子線を知らなかった人の比率は1割弱だった。電話での県民意識調査では知っている人は2割だった。

■重粒子線治療を受けたいか

重粒子線の治療を受けたいと思うと回答した比率は8割を超えた。電話での意識調査では6割弱だった。

■重粒子線の治療費について

治療費の質問では、高くても受診したい人は36%で、何らかの助成制度を望むが37%であった。保険適用までは待つは15%だった。

コメント

治療費が高くても受診したい人は36%。
助成制度を望む人は37% → 治療費助成制度が必要

がんの専門医への調査票

[調査対象] がんの専門医療機関18施設
[有効回答数] 医師200名中160名が回答(回収率8割)

■勤務地別回答者数

勤務地域別では5割が中部で、4割強が南部だった。北部は1割に満たなかった。
尚、離島の癌治療施設には調査票は送らなかった。

■重粒子線治療の相談を受けたことがあるか

重粒子線の相談を受けたことのない医師が7割弱で、たまに相談を受ける医師は3割だった。

■患者から重粒子線の受診相談を受けたら

患者から重粒子線治療の相談を受けたら約6割の医師が積極的に紹介すると回答している。分からないも4割弱存在した。

■治療費に対する紹介の考え

治療費と紹介の関係を聞いたところ、高くても紹介するが4割おり、助成制度があれば紹介するが3割強いた。

コメント

医師の6割は積極的に患者を紹介したい → 重粒子線治療に好感を持っている
医師の3割は助成制度ができれば紹介
医師の4割は治療費が高くても紹介
  → 医師の協力(紹介)を得るためにも治療費の助成制度が重要

上記アンケート調査の結果、以下のことが分かりました。

  1. がん治療医は重粒子線治療に好意的で積極的に患者を紹介
  2. 患者負担軽減のための治療費助成制度の要望が大きい
  3. 県民の重粒子線治療の認知度が低いため、継続的なPRが必要

県民意識調査を加味した県内患者数の推移
(定常状態での県内患者数)

①県民意識調査

②県内適応患者の推定

2020年~2024年の間には潜在的適応患者数500人~800人/年程度と推定される(注)。しかし、これら全てが重粒子線がん治療を受けるわけではない。大きな要素は治療費の負担である。治療費の負担問題は、県内医師からの紹介ルートの確立、県民の重粒子線がん治療に対する認識問題と並んで、集患体制の中でも非常に重要なポイントになる。

注)がん患者のうち、重粒子線がん治療適応者を部位別に推定した。適応率は放医研及び群馬大のデータに基づいている。がん患者数の都道府県別数値は2008年の集計がある。 
 これを基にすると、沖縄県ではがん罹患者数約6,000人、潜在的適応患者数は300~400人強となる。2020年~2024年の年齢階層別部位別がん罹患者数予測と沖縄県の年齢構成予測を用いて、がん罹患者数を予測すると8,600人(1.4倍)となり、高齢化によって重粒子線治療適応率の高い部位のがんが多くなるため、重粒子線適応患者はがん患者全体の伸びよりも大きい、500~800人(1.7~2倍)となる。

③県民意識調査結果からの推定

費用負担対策 治療患者数(人)
A 負担に対して支援なし 45 ~ 72
B A+助成金での支援 135 ~ 216
C B+保険適用 420 ~ 672
潜在的適用者数 500 ~ 800

④考察

集患の最大の課題は治療費である。
助成金での支援があるとAにBを加えた数となり、更に保険適用がなされると、最大で672名の患者が見込まれる。集患の観点でも治療費の助成制度は重要である。