2人に1人がガンに罹る時代

日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっています。
また、人口比におけるがんの死亡割合が世界的に見ても高く、しかも患者数・死亡者数は増加傾向にあります。

●2013年の死亡数が多い部位は順に
1位 2位 3位 4位 5位
男性 大腸 肝臓 膵臓 大腸と結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸8位
女性 大腸 膵臓 乳房 大腸と結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸9位
男女計 大腸 膵臓 肝臓 大腸と結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸7位

出典:がん登録・統計 最新がん統計(2015年4月22日更新)

また、男女別でみてみると、男性では前立腺がん、女性では乳がんなど、性別特有のがんの患者数も多いのが現状です。

特に前立腺がんは、高齢化、食生活の欧米化などの影響で増え続けております。平成17年度の厚生労働省の調査では、男性がんの中で患者数がすでに第1位となっており、50歳代から危険であることがわかります。(表1)

沖縄県では10万人当たりのがん死亡率が198人と、他都道府県よりも最も低い地域です。
がん死亡率全国最下位の沖縄県はがん患者の希望の地といっても過言ではありません。

しかしながら、沖縄でも、がんによる死亡率は年々上昇傾向にあります。
2011年では、75歳未満年齢調整死亡率が全国で11位となっており、このままでは死亡率最下位から転落する可能性が高くなります。

がんによる死亡率が増えていく中で、医療に関するニーズも高まってきております。医療技術の進歩で、がんに対する様々な最先端医療が増えてきました。しかし、その手術または放射線治療のできる施設は本土の都心などに多くあり、島嶼県である沖縄県にとって、がんの最先端医療を受けるには多大な出費と地理的距離による通院の難しさなどがあります。

沖縄県に最先端がん治療施設
【重粒子線治療施設】を!

がんに関する沖縄県がおかれている状況

沖縄県のがん死亡者数のうち、部位別で最も多いのは男女ともに肺がんです。重粒子線治療では1回の照射で治癒する可能性もあります。そのため、沖縄県での最先端がん治療は、沖縄県民のために肺がん治療に重点を置いた特徴を出す必要があります。
また、重粒子線治療は島嶼県である沖縄県における集学的がん治療※注1の確立に有効です。がんの予防から終末までをシームレスに繋げる、医療連携の実現を図る上で重要になります。

さらに、沖縄県はがん死亡率は全国一低いのですが、75歳未満ですと11位と比較的高い傾向にあります。侵襲性の低い重粒子線治療は高齢者のがん死亡率を下げる有効な治療であり、健康長寿沖縄の復活への有力な手段となります。
世界最高水準の重粒子線治療施設は日本国民だけでなく、全世界からも注目される施設です。東アジアのへそにあたる沖縄県は、アジアだけでなく世界中のがんで苦しんでいる患者さんの希望となります。
患者さんとその家族を癒すための医療ツーリズム、医療産業の拠点としてのニーズが高まってくるでしょう。

※注1:集学的がん治療→がんの治療方法である手術治療、放射線治療、薬物療法などの治療方法を単独で行うのではなく、がんの種類や進行度に応じて、さまざまな治療法を組み合わせること。

なぜ沖縄県に設置するのか

先ほども述べたように、沖縄県は東アジアのへそにあたります。また、2020年には那覇空港の滑走路が増設され、国内外の航空路線のハブになる予定です。国内だけでなく、周辺各国への移動がしやすくなることで人が集まりやすい環境にあります。

さらに、世界的な研究者が集まるOIST(沖縄科学技術大学院大学)と国内機器メーカー、ベンチャー企業が連携することにより、重粒子線加速器の研究や次世代医療機器の開発が行われることで、沖縄から新たな最先端医療を発信することが可能となります。
将来的には、OISTの支援を得て、中性子線治療も可能となります。

しかし、重粒子線治療にはその特性上、どうしても広い敷地が必要となります。沖縄県にある西普天間地区は、返還跡地開発のモデルとして、国が国際医療拠点に指定しています。また、返還跡地利用計画と整合性を図ることで、国の他施策と連携し、相乗効果を発揮できます。

このように希望のある最先端のがん治療ですが、やはりどうしても費用は高くつきます。どんな人でもがん治療を受けられるよう、住宅ローンの条件に先進医療保険への加入を義務付けて重粒子線治療費の補償を行ったり、月額500円程度の会費で運営する制度を立ち上げ、重粒子線治療費を補償するなど様々な仕組みづくりが、経済界を中心に検討されています。

沖縄県における国際医療拠点と重粒子線治療施設の役割と意義

重粒子線治療をより充実するためには、地元の大学との連携も欠かせません。琉球大学医学部と附属病院を同じ敷地に移設することで国内外における最先端の放射線がん治療・研究を中核とした特色ある医学部及び附属病院ができます。

また沖縄県はその立地により、沖縄県民や日本国民にとどまらず、広くアジアの患者さんを積極的に受け入れ、重粒子線治療施設を核としたアジアの最先端がん治療の拠点となることを目指します。重粒子線治療を主軸に、より多くのがんに対し「切らない治療方法(非侵襲治療)」を確立し、がんの恐怖から解放する医療を推進します。

最先端がん治療には、最先端の医療機器が必須となります。医療機器の最先端技術や独自技術を持つ日本国内のME機器サービス産業と医学部が連動して効果をあげる体制を持つMEJのアウトバウンド事業のモデル拠点の構築、さらには外国人患者の検査・治療をするためのインバウンド事業の受け入れ窓口を担うことで最先端医療機器の常時展示と海外輸出の戦略拠点として期待できます。

同時に、より多くの最先端医療を担う人材育成を行うために、最新医療機器や医療技術の実証・研修を行うトレーニングセンターを医学部と連携して整備します。県内・国内はもとより、アジア各地から研修生を受け入れ、アウトバウンド事業と連動して、ME機器と技師を一体化した事業を海外に展開することができます。

県民・医師に対する重粒子線がん治療に対する意識調査を見る

基地の島から医療の島
(メディカルアイランド)へ

沖縄国際メディカルアイランド全体構想

沖縄国際メディカルアイランド研究機構は、宜野湾市の西普天間跡地を利用し、「医療情報ネットワーク」、「先端医療の戦略拠点」、「創薬による産業振興」等を行えるメディカルアイランド構想を実現すべく活動しております。

重粒子線治療施設を核としたがん先端医療拠点の創出と創薬による産業振興

日本版NIH分室と医療クラウドセンターを設立し医療情報の一元化と産業振興への貢献

重粒子線治療施設導入による
経済波及効果について

重粒子線治療施設の導入は、西普天間住宅地区返還跡地における医療拠点形成の核となります。これにより直接医療に関係する活動に加え、医療技術者の教育機関の誘致、沖縄科学技術大学院大学及び放射線医学総合研究所などとの連携による高度な研究開発、国内外からの学会等の誘致が促進されます。この結果、得られる経済効果は10年で1,800億円、経常時雇用効果は1,300人と算定されます。

出典:平成25年沖縄県重粒子線治療施設導入可能性検討調査報告書